聡子が合コンで知り合った彼は海上自衛隊の潜水艦(クジラ)乗りだった。
航海中は一切の連絡が取れない彼との交際は、予想以上の困難と忍耐が必要になり・・・。
表題作他、全六編の短編集。
今一番お気に入りの作家、有川浩。
最初の出会いは有名な「図書館戦争シリーズ」(アニメは未見)。
そもそも「図書館」と「戦争」というよくわからない組み合わせに、ずーっと気にはなっていた。
本屋に行く度に「図書館戦争」の本を手にしつつも買うべきか買わないべきか迷っていた頃が懐かしい。(ほら、ハードカバーの本って大きいし、高いし、もし買って途方もなくつまらなかったらダメージが大きいじゃないですか)
結局、何かのきっかけで「戦争」を購入し読んだ所、あまりの面白さに寝食を忘れて読み耽った上に、次の日、開店と同時に本屋へ続きを買いに走るハメになった。
面白い本はいろいろとあるけれども、面白い上に「なんでもうちょっと早く手にとって読まなかったんだろう」と後悔すらしてしまう本はなかなか巡り会えないので、この時は純粋に嬉しかった。
有川浩という方は自衛隊に知り合いがいるのか、それとも本人がそうだったのか、それとも単にマニアなだけなのか、どの作品も自衛隊がらみの話が多い。
「図書館戦争」は自衛隊という組織を少し捻った形で作品にしたものだったし、「塩の街」(陸上自衛隊)、「空の中」(航空自衛隊)、「海の底」(海上自衛隊)という「自衛隊三部作」なるものも書いている。(塩と海は未読です)
今回の「クジラの彼」も、どの短編も自衛隊がらみの話であった。そしてかなりのベタ甘恋愛もの。
そもそも、自衛隊という組織は自分はあんまり詳しくないため、男ばっかりで毎日訓練に明け暮れている様をみると、どちらかというと下世話な方向への想像しか働かないのだが、作者が女性という事もあるのか、作品に登場する男達は「弱き者は無条件で守るぜ」的なタイプが多い(当然のように見た目も良い)。
しかも仲間内でシモネタ話などで決して盛り上がらずに「くだらねぇ話してんじゃねーよ」と言って話しに加わらないような奴だ。(現実世界だったら、多分そういう人が一番ムッツリです)
平たく言えば、筋肉系王子様タイプとも言うのだろうか。
まぁ、少女マンガ的な理想の男性像色が強いものの、それがとても良い。
普段は生真面目で不器用で、でも、いざという時は頼りになって、照れながらもヤル事はヤルみたいな。
正直に言うと、自分の好きな(理想の)タイプなんですな。
現実に作品に出てくるような男がいたら是非、お付き合いしたいものです。
あぁ、こんな事を書いていると、単に自分の好みの男が出てくるからこの作家が好きなんだろうと思われそう。
もちろんそれだけじゃありません、単純に面白いからです。
そして、どの話も爽やかな読後感に気持ちよく浸れる事請け合いです。